Impression of Canon F-1n

このカメラを操作するにあたり久しぶりにセコニックスタジオデラックスを持ち出した。現行機種の先代、つまりシャッター速度が1/2000の表示のタイプである。定常光とTTLのズレは、これはしょうがない。久々なのはメカニカルカメラも同様、あえて電源を落として使ってみた。今は手元にないNikon newFM2やPentax SPで楽しんだ露出感覚が蘇る。

露出計と追針式のメーターを併用して桜、神社の祭り、うみねこの群れなどを撮って歩いた。レンズは50mm/f1.8と28mm/f3.5。馴染みの画角だがなぜかしらファインダーの中の風景が新鮮だった。それもそのはず追針式のメーターにはシャッタースピードも絞り値も記載されていない。個々に確認する必要があるのだ。

不思議だったのはいつもよりワンテンポ早く切ってしまうシャッター。電気式レリーズに慣れたタイミングが実はかなり遅いことを改めて自覚した。またAF時のフォーカス微調整のタイムラグにも由来するであろうそのズレを意識しながら「感じて撮る」快感にしばし浸った。

晴天下どこも人出は多く、必然的に一眼レフなどを持った好事家もかなり見受けられたが、露出計を片手にMF機を下げたカメラマンは皆無だった。

不便さと優越感。

懐古的であるも僕にとっては最新のアイテム。

自己責任による露出の決定。

シャッターレリーズの度に感じる心地よい緊張。

最高級機ゆえの敷居の高さが一コマ毎に薄らいでいく。一本撮り終える頃には旧知の友人の様に親密になれた。

ファインダー内の情報表示はもしかしたら僕にとっては不要なものなのかもしれない。数字を確認する作業がともすれば「絵」そのものを見る動作を阻害しているのではなかろうかとも思えた。感覚的に追針式のメーターを認知することで安心してシャッターが切れるなら絞り優先時のシャッター速度の表示やフォーカスインジケーターなど取るに足らないものである。

光を意識させられるカメラであり、写真が光と戯れる遊びであることを再確認できた一日だった。

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